創造のシナプス
GROUNDRIDDIM × C (VJチーム) /
MONS TOKYO WEEK・HIFANA 編

〜映像作品が生まれる現場の遍歴〜

ある映像作品に注目し、その作品を制作されたチームの方々に映像の制作過程を伺い、映像作品が誕生していく現場の遍歴として紹介する「創造のシナプス」

今回注目する映像制作は、VJ、ビデオジョッキー (Video Jockey)、ビジュアルジョッキー (Visual Jockey) の現場である。

VJというと、DJやミュージシャンの演奏に合わせた映像をみせる仕事、といった認識があると思うが、その多くはコンサート、イベント、クラブなど生のライブで体感する映像だ。そのため、VJの実際のステージを見たことがなかったり、VJが具体的にやっていることがよく判らないという方も多いのではないだろうか。
そこで今回、映像のシナプスでは、VJが生み出す映像の魅力、面白さに迫ってみたいと思う。

登場頂く映像クリエイターは、DJ、HIFANA (ハイファナ) のVJを長年手掛けている GROUNDRIDDIM (グランドリディム) × C (シー) の VJチームだ。
このVJチームが生み出すライブの中で、特に注目する作品は、2015年10月、ベルギーのモンスという街で開催されたイベント「MONS TOKYO WEEK」オープニングパーティーでの HIFANA のステージである。

注目する作品:「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ

まずは HIFANA (ハイファナ) の「MONS TOKYO WEEK」のステージをご覧頂きたい。

HIFANA LIVE / Ailleurs en Folie Tokyo Belgium,15th October 2015 (groundriddim)

欧州文化首都「MONS TOKYO WEEK」

欧州文化首都は、欧州連合が指定した加盟国の都市にて、一年間にわたり集中的に文化行事を展開する1985年から続く事業。

30週年目の2015年は、ベルギーのモンス市で開催。うち10月、東京にフォーカスした「MONS TOKYO WEEK」は、GROUNDRIDDIM がプロデュース。

HIFANA のパフォーマンスはこの「MONS TOKYO WEEK」のオープニングパーティーにて披露された。

「MONS TOKYO WEEK」では、HIFANA のパフォーマンスのほか、絵画やテクノロジーなど東京や日本をモチーフにした様々な作品が展示、紹介された。

紹介画像:© jonathan Brisson

HIFANA

KEIZOmachine! と JUICY により1998年に活動を開始したブレイクビーツデュオ。

プログラミングやシーケンスを使わずに、サンプリングされた音源を叩き、生演奏しながらスクラッチやパーカッションを乗せるスタイルを持ち味とする。

音楽やライブなどは和風、日本を強く意識した世界観で展開している。海外からも高い評価を得ているアーティストである。

GROUNDRIDDIM (グランドリディム) × C (シー) VJチームについて

「MONS TOKYO WEEK」のステージ ─── 演奏する HIFANA の映像にリアルタイムに掛けられるエフェクトや、音楽に合わせて次々と繰り出されるその複雑な映像は、一体どのようにして生まれるのだろう。

今回お話を伺った GROUNDRIDDIM (グランドリディム) の三上太朗さん、松本剛さん、C (シー) の高橋正教さんである。

まず、GROUNDRIDDIM とはどんな集団か教えてください。

松本:GROUNDRIDDIM は、コアメンバーが、6人〜10人ほどのクリエイティブプロダクションになります。

そもそも HIFANA というミュージシャンがいて、その HIFANA の世界観を創っていくのに、彼らを取り巻くイラストレーターや、レコード会社のA&Rをしていた人たちが集まって、映像も必要だから一緒にやろうよ、と活動を始めたのがきっかけです。
今から10年ほど前でしょうか。

GROUNDRIDDIM × C の VJチーム
写真左から C の高橋正教さん、GROUNDRIDDIM の松本剛さん、三上太朗さん

三上:ぼくたちは、その GROUNDRIDDIM の中の VJチームになります。GROUNDRIDDIM には、VJ以外にも、イラストレーターやデザイナー、ミュージシャン、映像作家、プロデューサーが所属しています。

松本:GROUNDRIDDIM 自体は、CM や ミュージックビデオだけでなく、イベントのプロデュースまで、いろいろな仕事をしています。Webの話が来ることもあるし、デザインの話もあるし、音楽の話もある。
内部にクリエーティブを持っているから、プレゼンの段階で結構クオリティーの高い音や絵を用意できることができます。またプロデューサーのポジションを行えるので大きなプロジェクトを受けやすいのも GROUNDRIDDIM の特徴だと思います。

GROUNDRIDDIM×C のチームとしては、HIFANA のステージ以外に、これまで YMO や パスピエといったアーティストのVJも手掛けています。

GROUNDRIDDIM の特徴の一つが、映像、音楽に留まらず、イラストレーターやデザイナーが所属していることだ。
ちなみに 上記写真のお三方の頭上、GROUNDRIDDIM の事務所にさりげなく飾られているスケードボード。このうち白黒のイラストは、GROUNDRIDDIM 所属の イラストレーター、MAHARO 氏が描いたもの。MAHARO 氏は、HIFANA のメンバー JUICY の実兄であり、JUICY 自身も絵を手掛ける。スケードボードのカラーのイラストは JUICY によるものだ。

VJ とは?

GROUNDRIDDIM×C のVJについて詳しくうかがう前に、VJ とは、一般的にどんな仕事か教えてください。

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ:GROUNDRIDDIM × C の VJチーム © jonathan Brisson

松本:ミュージシャンのライブでは、照明と共に映像を流す演出がよくあると思います。例えば、演奏者を映した複数のカメラをスイッチングして見せるような映像ですね。でも音楽によっては、ただ演奏者を映していても面白くないので、その音楽の世界観にマッチする映像を、音楽に合わせて出していく。その映像を担当するのがVJだと思います。

ただ、VJは、あらかじめ決めておいた映像を1番、2番、3番とポン出ししていくよりも、そのステージ、瞬間々の空気感を読んで、臨機応変に映像を出していくスタイルが多いでしょうか。例えば、お客さんがあまり盛り上がっていないなら、ビキビキした映像は合わないから、じゃあそこは静か目にやろう、といった感じです。

三上:ステージ上では、バンドの一員として、DJのそばでパフォーマンスするVJの方もいますが、基本的に立ち位置はPAに近いですね。やはり主役はステージのミュージシャンですから、僕らはその盛り立て役です。

松本:本番のステージに向けて何か凄く仕込んで、練習をして、というものよりも、それぞれのVJが持つカラー、例えばアニメーションが多いとか、ポリゴンベースの3Dチックな演出とか、自分たちの持ち味を生かしながら、そのステージに合わせて映像を演奏していく仕事かと思います。

VJ は「映像を演奏するお仕事」───なるほどです。

[GROUNDRIDDIM × C] VJチーム、それぞれの役割

ここで GROUNDRIDDIM×C のVJチームが、どのように最終のステージ映像・VJを作っていくのか、MONS TOKYO WEEK のステージができるまでの、具体的プロセスを紹介しよう。

ざっくり言うと次のような流れになる。

1:演奏するミュージシャンを撮影するカメラA,B,Cの映像
2:ロゴモーションなど用意した映像素材を動かすVJソフト【Modul8】
3:ライブ映像から即興ビジュアルを生成するギミック【TouchDesigner】
4:1〜3などの映像素材をミックス、加工しながら、演奏に合わせて出すミキシング

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ ©jonathan Brisson

では、GROUNDRIDDIM×C、VJチームの3人が具体的にどのような役割を担っているのだろう。

三上太朗 氏の担当

三上さんは、主に上記パートの「2:ロゴモーションなど用意した映像素材を動かすVJソフト【Modul8】」を担当する。

Modul8 操作画面

三上:Modul8 (モジュールエイト) は、主にロゴモーションなど After Effects 等で生成したムービーファイルをソースとして読み込み、新たにエフェクトを掛けたり、音に合わせて更にアニメーションさせる加工をリアルタイムに行う VJソフトウェアです。

After Effects などで作成したアニメーション素材は、3人がそれぞれ用意してきます。それらの素材を、主にこの Modul8 に組み込み、現場で発動させています。

Modul8 に読み込む動画素材は、アルファチャンネルありとなし、どちらも使用します。

三上:実際のVJの現場では、この Modul8 と MIDIパットというフィジカルコントローラーを USB でつなぎ、Modul8 の4×4の16ますに配置した映像ソース (左画像) を音楽に合わせて手押しで再生させてます。

高橋正教 氏の担当

高橋さんは、主に上記の「3:ライブ映像から即興ビジュアルを生成するギミック【TouchDesigner】」のパートを担当。

TouchDesigner 操作画面

高橋:TouchDesigner (タッチデザイナー) は、ノードベースのビジュアルプログラミング環境です。

一つ一つの要素をつなげて、様々なギミックを作ることができます。

HIFANA の VJの現場では、ライブ映像を TouchDesigner に引きこんで、そのソースから即興性の高いビジュアルを生成します。

現場のライブ映像 (演奏者を撮るカメラの映像など) と、TouchDesigner で生成されるビジュアルを、mixしながらプレイするという手法が、僕らの特色の一つかもしれません。

TouchDesigner で作成されたギミックが現場のライブ映像にリアルタイムで合成される

 

ストックされた様々なギミック

松本剛 氏の担当

松本さんは、主に上記パートの4、ミュージシャンから来る MIDI信号を制御、Grand VJ にて映像を送出しつつ1〜3などの映像素材をミックス、加工しながら、演奏に合わせて出すミキシングとシステム全般を担当する。

松本:まず、現場のカメラ、Modul8、TouchDesigner、そして自身の信号、の各映像素材を、スイッチャーに取り込みます。

スイッチャーは、Blackmagic Desgin の ATEM、いわゆるプロダクションスイッチャーを使っています。サッカーの試合とかライブ中継などで使われるものですね。HDMI が4系統、HDSDI が4系統の、計8入力です。

左手前が、Blackmagic Desgin 社のプロダクションスイッチャー「ATEM 1 M/E Broadcast Panel」
右奥が、フィジカルコンローラーのコントロールパネル

松本:そしてこのプロダクションスイッチャーに取り込んだ 8つのソースを実際に加工したり、ミックスさせる操作を行うのが、フィジカルコンローラーのコントロールパネルです。

松本:このミキシングは、パソコンのソフトウェアコントロールパネルでも行うことができますが、実際の音楽に合わせて高速でマウスで動かすのは無理ですので、このコントロールパネルでスイッチングをしています。

それにこのフィジカルコントロールパネルを使えば、例えば、一方のパラメーターの値を下げならが、もう一方の値は上げるといった複数の同時操作も可能です。
別に見た目の格好をつけているわけではありません。(笑)

僕は、このコントロールパネルを使ったスイッチング、ミキシングした最終出力のパートを担当しています。
ミキシングに使用しているソフトは、GrandVJ です。

GrandVJ 操作画面

松本:スイッチャーの各キーにそれぞれ映像を割り当てておいて、それらをオーバーラップさせたり、キーイングで抜いて合成させたりします。
このルミナンスを抜いたりするキーイングも、プロダクションスイッチャーなら、フルハイの非圧縮で、遅延なしのリアルタイムでやってのけるので、それもハードを使うメリットの一つですね。

例えば、単純に言えば、ドンドンドンというリズムに合わせて、映像をABABABとスイッチングすることでVJの効果になる訳です。

[GROUNDRIDDIM × C] VJチームのカラー、持ち味とは

VJの映像は、実に様々な要素を組み合わせることによって生まれているのですね ───
TouchDesigner で作られた複雑なエフェクトが、その現場のライブ映像にリアルタイムで掛かると驚きますね。

松本:僕らの VJ を見ている人たちが、なんでそうなっているのか判らない!となってくれると嬉しいですね。

高橋:TouchDesigner のエフェクトを、現場のライブ映像にリアルタイムで乗せるとしても、例えばそのエフェクトが掛かった映像が5分間ずっと流れる、といったことはありません。

逆に、TouchDesigner のエフェクトが掛かっている映像と掛かっていない映像をキックの音に合わせて、ドッドッドッと切り替えることで、見ている人はオッ、どうなってるの? 面白い!となってくれる。

松本:そのエフェクトの切り替えに、ミキサーを叩いてる感じです。

三上:更にそこにアニメーション、例えばロゴモーションが、ザッツ!と来たりとか、全てがオンビートで行けばいいなと。

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ:GROUNDRIDDIM × C の VJチーム © jonathan Brisson

松本:どんなに凄いCGも、凄く時間掛けてレンダリングすれば、現場で流すことはできます。けれどそれだけではVJとしては寂しいんです。

お客さんが見ているライブの現場で、今まさに、そこで演奏しているミュージシャンの映像が何かしら加工されて、演奏に合わせて出てくる、しかもその映像の加工のレベルが高いほど、見ている人が、オッー!となってくれます。

TouchDesigner のエフェクトは、普通にレンダリングで作ろうとしても面倒な処理ですから。

僕たちとしても、このマーさん (高橋氏) の TouchDesigner は凄くいいなと思っています。GROUNDRIDDIM×C のVJの面白さの一つですね。

左画像は、取材中に見せて頂いた TouchDesigner のギミックの一例。

この効果は、輝度のしきい値を取り、それを全てラインでつなぐというもの。しかも面、ポリゴンの塗りも入っている、大変複雑な処理を行っている。

このようなギミックがライブ映像に、リアルタイムで乗りながら、音楽に合わせて効果的に流れる訳だ。

TouchDesigner のノードは、VJの現場でも組まれるのですか?

高橋:スベシャルなものを作ろうとしたら、やはり時間がかかってしまいますので、現場に入る前に用意することが多いです。でも時間があるかぎり、現場で加工したり組み合わせたりしてます。

松本:僕たちはジェネレート系の偶発的なVJはしていません。After Effects を駆使してアニメーションを作ったり等、ある程度狙った演出を目指しています。

HIFANA のステージで、映像の動きが、HIFANAのDJの動きに完全にシンクロしているように見えるものがありましたが、それはどのようにしているのでしょうか?

松本:音と映像をシンクロさせる手法に、ビデオスクラッチというものがあります。
そもそも HIFANA が演奏するMIDI楽器は、いわゆる何かしらの信号を出せるものですが、つまり HIFANA が演奏をすることによって、HIFANA 自身が、映像など何かをトリガーすることができるんです。
それを利用した一つが、ビデオスクラッチです。

HIFANA "STAR FES 2013" ~ Live Intro ~
Serato Video を活用したステージの例

松本:HIFANA のステージのイントロでよくやるのですが、例えば、そのライブ会場にいるミュージシャンやお客さんに「HIFANA ───!」とシャウトしてもらう、まさに今撮ったよね、と判る動画を用意します。

そして、その動画を、HIFANA のパソコンに入れ、「Serato Video (セラートビデオ)」というソフトで、ターンテーブルにシンクロさせます。

この Serato は、iTunes に収録する MP3 などの音源ファイルを、実際に本物のターンテーブルでスクラッチすることができるシステムなのですが、そのソフトが進化して今はビデオファイルもこすることができます。

松本:つまり、HIFANA がターンテーブルでスクラッチすると、それに合わせて、先ほど撮った動画が「ハ、ハ、ハ、HIFANA ───!」となります。
そこでお客さんが、あ、動画をこすってる!となる訳です。

何でもないことを言っているのが、音楽になってしまうのがいいんですね。例えば今の「何でもなくななな何でもない」と、リズムが乗ってきて、見ている人はつい笑ってしまう。HIFANA のステージではお馴染みの演出ですが、必ず盛り上がりますね。

これを編集してきて持ってきて再生するだけだったら面白くないですよ。その場にいた人とか、さっき起こったことであればあるほど会場は盛り上がるわけです。

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ © jonathan Brisson

松本:極論、ミュージシャンが演奏すれば、自動的にどんどん映像が切り替わるみたいなことも実際できて、それはもう多分、僕たちの手のオペレーションでは追いつけないレベルの早い切り替えもできるんですね。

一方で「ドッドッドッ、どうもー」とか「キュキュキュ、どうもー」みたいな、ビデオスクラッチの映像を出し、もう一方で「ドン、ドン、タン、ドン、ドン、タン」とドラムを叩いたリズムに合わせて、別のアニメーションキャラクターの映像、例えばお化けのちょうちんが落ちてきたり、火花が散ったりみたいなアニメーションを出たりする。

今のVJは、この HIFANA から出す映像や、僕らのほうから出す映像を、先に紹介したスイッチャーでミキシング、加工して、お客さんのところに出していく、という工程を経ている訳です。

ここで、三上さんがポンと手を叩く。その音に合わせて Modul8 に表示していたロゴがビュンと動く。

三上:例えば、今のように音で映像が映像が反応するといったこともできます。ほかにも、ドラムを叩いたらその音に合わせて火花が飛ぶとか、さまざまな要素を組み合わせた演出ができます。ソフトも進歩しているので、どんどん複雑なことができますよね。

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ © jonathan Brisson

松本:どちらかというと僕らは大掛かりな VJ になるでしょうか。
一般的なVJは、PC一台持って現場に行く、といった人たちが多いかと思いますが、僕らは、リアルタイムで撮影した映像をスイッチングするので、そのスイッチングするための機材やカメラ、GoPro でも3、4台を現場へ持って行き、ケーブルの引き回しとかも含めて全部セッティングしています。

これぐらいの規模のVJだと車両を用意して運ぶ必要もあるし、そこまでできる環境の VJ はあまり多くないと思います。そういった面も GROUNDRIDDIM×C VJ の特徴の一つかもしれませんね。

VJ で使用するツール

VJ する際、Modul8 や TouchDesigner、GrandVJ 以外で使用するツールがありますか?

作例1:Trapcode Particular を活用した HIFANA のロゴモーション © GROUNDRIDDIM

松本:After Effects です!

三上:プラグインの Trapcode Particular も使いますよ。HIFANA のロゴモーションではよく使っています!

ありがとうございます!
(Trapcode Particular の詳細はこちら)

作例2:Trapcode Particular を活用した HIFANA のロゴモーション © GROUNDRIDDIM

高橋:映像クリッブを作ることも多いので、やはり AfterEffects がメインツールです。

AE で作りにくいものは TouchDesigner で、TD で作りにくいものは Houdini で、といったように使い分けています。もともと TouchDesigner は Houdini から派生してできたツールなので、思想が一貫していて使いやすいです。

どのツールでもバーティクルをコントロールできますが、なかでも Trapcode Particular は実行速度が爆速ですよね!とても重宝しています。

こだわりのワンショット

VJではワンショットを選びにくいと思います。
「MONS TOKYO WEEK」のステージで、何か新しくされたことや、力を入れたものがあれば教えてください。

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ © jonathan Brisson

松本:モンスでいえば、レーザーですね。

レーザーには、ILDA (アイ・エル・ディー・エーと書いてイルダ) という規格があるのですが、そこで流れる信号は、音声信号と同じ5ボルトの電圧なんです。それを利用して、HIFANA が MIDI楽器を叩くと、そこに向けて上からレーザーが降り注ぐ仕掛けを作りました。

MIDIパットのボタンを押すと、そこに雷みたいにレーザーが落ちてくる訳です。

松本:映像を見て頂くと判ると思いますが、HIFANA が演奏すると、叩いたボタンにバシバシとレーザーが撃ち込まれるから、ぱっと見では、逆に叩いたところから光が出ている、ボタンから光が発せられるようにも見えるんですね。

「MONS TOKYO WEEK」HIFANA のステージ © jonathan Brisson

このレーザーの技術開発や、色が変わるLEDパネルなどステージを装飾する光に関する全般は、rhizomatiks (ライゾマティクス) さんにやって頂いています。

はじめにレーザーを使って何ができるかは、GROUNDRIDDIM のスタッフでブレストしましたが、実際にシステムを組んで、現場を担当してもらったのはライゾマチームです。GROUNDRIDDIM×C はステージのスクリーン、VJを担当して、この光と映像にの演出が加わって「MONS TOKYO WEEK」の一つのステージが出来上がっている訳です。

問題解決力

現場で起きる様々な問題。それを解決し乗り越えた時、作品のクオリティは一段と高まります。
今回の作品で特に印象深い制作過程を聞かせてください。

松本:映像には関係ないのですが、モンスでの本番の直前、僕のパソコンが火を噴いて、VJに用意してきたデータが全部消えてしまいました。

え ───!?

松本:原因は、漏電です。今回の会場自体が、一歩間違うと人が死ぬレベルの大漏電を起こしていたんです。そこで僕が、サンダーボルトのケーブルを Mac に挿した瞬間、そこから火を噴いたんです。

海外へ行くと、日本が凄い国だとあらためて判るのですが、海外は漏電が当たり前なんですね。海外でコンセント挿して Mac を触っていると手がジリジリします。で、ご多分に漏れず、そのモンスの会場も漏電してた訳です。

「MONS TOKYO WEEK」会場での設営風景

松本:先に紹介したように、現場でいろいろな機材がつながっていることも問題です。

例えばこちらのミュージシャンのマシンはあちらのコンセントに挿している、そしてこちらのマシンはまた別のコンセントに挿している、で、そのマシン同士をケーブルでつないで、それをまた別の人のパソコンにつなげている ───と、漏電がグランドループしてしまう状態になっていて、すごくまずい電圧まで上がっていたんですね。

そこで僕が最終打を打った。ばつーん、と。最後、何かをつないでしまったんですよ、輪を。

僕がやった瞬間、「あ、落ちた」「俺アプリ落ちた」とみんな言い出して、、、なんだったら、あとはコーヒー飲んで本番までゆっくりして、英気を養おう、っていうタイミングで全部飛ぶという悲劇ですね。

、、、で、どうされたのですか?

松本:Mac を全部バラして、復旧しました。さすがに僕もバックアップ用のデータを別ハードディスクで持っていました。それでノートパソコンを開けて、中のSSDを組み替えて、ネットつないでプラグインとかシリアルとか入れ直して、全部再構築しました。

本来ならマシンも二台持っていくべきでした。普段の渋谷とかのイベントだったら、何か起きたら買いに行けるじゃないですか。でも、今回のような海外で、しかも田舎町で、もう何もないところですから。例えばHDMI変換一つなくても手に入りませんし。

本番の当日だったのですか?

松本:はい。当日の、6時間前です。これはもう本当に、1、2時間前だったら無理でしたね。
HIFANA が演奏したものを受けて何かが発動する MIDI系統は、全て僕のマシンが担当しているんですよ。その要素がなくなってしまう。最悪、そのパソコンを介さずに組み合わせを変えれば、まあ何とかなりますが、演出を変えなきゃいけない。でも、なんとか復旧できた訳です。

でも、もう一度、会場でつなぐ時怖いですね。。。

松本:はい。もうテスターとか触っただけでもビリビリなので、会場と話し合って、復旧している間にプロフェッショナルを呼んでくれと頼んだんです。

で、来てくれたそのプローブ (測定する方) が、すごい巨漢の白人のおじさんで、チェックといってもテスターとか使わないんです。なんか、なめて触る。(笑)

松本:それで「どこが漏電したんだ」ってすげー偉そうに聞くので説明すると、「全部抜いてみろ」って。

確かに問題がある時は、1個ずつ変えて、ネガティブチェックするんですけど、いきなり全部抜かされるわけですよ。それで全部抜いたら「もう大丈夫」だって。

いや、またつなぐからって。そういう問題じゃなくて根本的なところだって言って。

で、結局、発電機から会場へ来ている配電盤が2系統あったらしく、それを別系統に変えてもらったら、ましになったという感じですね。でもまだ漏電してましたけど。本番も何とか無事に終えることができました。

いやー、聞いているだけで焦ります。
松本さんが、パソコンの修理ができてよかったです。。。

松本:好きで覚えちゃったんですよ。でも、できなかったら、Google で調べます。それが仕事だから。ま、本番までに何とかしないとまずいですし。方法は何でもいいと思います。例えば誰か人のパソコン借りてもいい。とにかく何とかしないと、僕が行った意味がなくなってしまいますから。

でも今回、このトラブルで僕はつくづく思ったのですが、仕事はやはり仕事なんで、なしはないですよね。できなかったは、ない。だって、本当にしょうがないじゃん、って言いたくなるぐらいの事故なんですけど、でも誰もしょうがないって言ってくれないんで。全部二つ、何でもダブルバックアップしないといけないということが、本当に身に染みました。

[GROUNDRIDDIM × C] VJチームのDNA

モンスでの滞在は長かったようですが、全て VJ の準備なのですか?

GROUNDRIDDIM の事務所にて、VJのデモを拝見する

三上:ベルギーのモンスには、高橋が1週間くらい、僕と松本は一ヶ月くらい滞在していました。

「MONS TOKYO WEEK」は、HIFANA のオープニングパーティーのステージ、VJ だけでなく、その全てのアートイベントについて GROUNDRIDDIM がプロデュースしています。

僕もそうですし、事務所全体で、一つ一つの出し物についてクリエーティブディレクションしています。

松本:僕らはみなそれぞれ映像という軸がありますが、普段から VJ 以外の仕事もいろいろしています。

三上:助監督もやるし、プロデューサーもやるし、ディレクションもやります。

松本:僕は、ミュージックビデオのディレクションをすることが多いのですが、その中で特殊なCGのシーンといったものがあったら、マーさん (高橋氏) に発注するわけです。この人間をバラバラの粉にしてくれとか。

VJ だけではなく、いろいろなお仕事をされているのですね。
お仕事について普段心がけていること、行っていることなどあれば教えてください。

三上:机に向かっている時には出てこないので、なるべく机に向かわない様にしています。

高橋:手が勝手に動くまでとにかく手を動かす、です。

松本:VJとしてなら、VJする楽曲を出来る限りの爆音で聞くことです。(笑)

HIFANA のVJ は、3人で組まれることが多いのですか?

松本:最近はですね。HIFANA とは長いので、いろいろなメンバーが関わっていますが、今はこのスタイルが多いです。

本番の準備はどのようにされるのでしょう? 事前にテストしたりするのですか?

松本:大枠だけ決めて、後は結構当日 ─── みたいな感じですかね。

高橋:僕、こういうの持ってきたよ、みたいな。

松本:もちろん全く話さないことはないですよ。次のライブはこの曲でこうだから、じゃあ、日本のお祭りっぽい感じにしようか、とか、さすがに話します。

もう、あうんの感じですね?

三上:大枠だけ決めてあとは自由。

高橋:行き当たりばったりの即興性がとても大切かも。

松本:自由行動。そうですね、別に事前チェックもしませんし。

三上:でも同じ着地を目指している感じですね。

松本:なら大体着地できているじゃないですか。(笑)

取材を終えて

GROUNDRIDDIM×C の VJ チームへのインタビューは、高井戸の住宅街にある GROUNDRIDDIM の事務所 (一軒家) にて行われました。
それぞれ平行していろいろなお仕事をしているお三方、インタビューが終わるや、それぞれのお仕事へと急行されていました。
忙しい中をお集まり頂き、ありがとうございました!

GROUNDRIDDIM(グラウンドリディム)

東京発の FRESH(斬新な刺激)を追求するクリエイティブ・プロダクション。

東京は杉並の静かな神田川沿いにある音楽スタジオ『POTATO STUDIO』を併設した1軒家にクリエイションの場を構える。

HIFANA・鎮座DOPENESS・DJ UPPERCUT をはじめとする複数のミュージシャンや、エンジニア/ディレクター/プロデューサーを擁する音楽チームと、映像ディレクター/グラフィックデザイナー/イラストレーター/大学教員などのヴィジュアル・チームにて構成されている。

音楽と映像の同期を基調とした空間演出の可能性を探り、そのリアルタイムに作品を創りだすVJパフォーマンスは HIANA のみならず多くのアーティストからも信頼され、これまでに Yellow Magic Orchestra やパスピエなど幅広いミュージシャン達とのコラボレーションを果たしている。

また、音楽/映像業界のみならず企業広告やイベント、親と子供が一緒に楽しめるワークショップなど幅広いフィールドにおいても高い実績を重ね、その活動は国内に留まらず海外からも 熱い視線を集めている。

2015年10月にはベルギーのモンス市で開催されたEUが主宰する文化プログラムに於いて、日本をフォーカスしたアート展である「Ailleurs en Folie TOKYO」をプロデュースし、欧州各国より5000名を越す来場者を記録。アート関係者からも好評を得ている。

http://www.groundriddim.com

欧州文化首都「MONS TOKYO WEEK」

C(シー)

profile:あらゆるメディアを横断して、本質的でパワフルなビジュアルを構築するクリエイティブスタジオ

work:NIKE/AIR MAX CON 2016 Ad movie、NETFLIX JAPAN/SNS Ads、スチャダラパー/暮れの元気なご挨拶(KGG)ツアー2015 VJ Clip、富士通/ARROWS NX F-04G wallpaper等他多数

http://ccccccc.jp

HIFANA おすすめリンク

HIFANA "Hanabeam"
HIFANA "Fatbros"
HIFANA "WAMONO"