【映像を学ぶ!現場レポート】
デジタルハリウッド大学 / 映像制作演習 PBL

ツールの革新によって映像制作の敷居がぐっと低くなった昨今、誰もが手軽に映像制作の方法を学び、自分の映像作品を作成し発表できる環境がある。
そんな中、現在、学校で映像制作を学ぶ学生たちはどんなことを行っているのだろう?
今回、デジタルハリウッド大学、映像制作演習にて行われた PBL (Project-Based Learning) の現場をレポートした。
未来の映像作家たちの育成の現場を覗いてみよう。

PBL (Project-Based Learning) について

PBL (Project-Based Learning) とは、プロジェクト型学習とよばれる実践的な学習を主眼に置いた学習方法である。
今回、デジタルハリウッド大学で行われた PBL は、プロミュージシャンのミュージッククリップの作成に学生たちが参加するというものだ。

KEIZOmachine! feat.VERBAL (m-flo) のミュージッククリップ
「UPSIDEDOWN」のダイジェスト映像

まずは、今回の PBL で実際に作成されたミュージッククリップのダイジェスト映像をご覧頂きたい。

PBL を行った「デジタルハリウッド大学 / 映像制作演習」について
インタビュー:講師 / 燒良和さん

今回話を伺ったのは、デジタルハリウッド大学で講師を務める燒良和さん。
今回の PBL を行った「映像制作演習」はどんなクラスですか?

デジタルハリウッド大学の映像制作演習は、主に映像の合成や編集、モーショングラフィックスを修得するクラスです。

全実習の期間は、大学4年のうちの2年間。大まかに1年目は映像制作の基礎を学び、2年目はその応用として実践的な制作を行っています。

使用する主なツールは、After Effects と Premiere Pro。基礎の1年目でこれらソフトの使い方を習得します。起動して素材を読み込んで、といったところから始めます。

2年目では、その1年で培った技術をもとに、企業などと一緒に実践に近い映像制作を行います。今回の PBL は、この実践的な演習カリキュラムの一つになります。

デジタルハリウッド大学「映像制作演習」講師 燒良和さん

「映像制作演習」は4年間のどの期間で行われるのでしょう?

デジタルハリウッド大学は、デジタルコンテンツ学科という1学科のみの大学になります。(理解が正しいでしょうか?本ブロック異なれば補足調整お願いします。)

学生は、この1学科にある幾つかのクラスを、自由に選べます。「映像制作演習」は、最初の1年目から取る人もいますし、3DCGやWebといったクラスを経て選択する人もいます。デジタルハリウッド大学では自分の適正や学びたい内容を探りながら、学生の意志でクラスを選択することができます。

PBL の内容

今回の PBL では、具体的にどんな映像制作をされましたか?

今回のPBLでは、KEIZOmachine! feat.VERBAL (m-flo) さんのミュージッククリップ「UPSIDEDOWN」を制作しました。

みんなでミュージックビデオを作ろう!です。

まず、あらかじめ撮影した VERBAL 氏のグリーンバック素材を学生に配ります。

今回は、課題曲の約3分を、A、B、C、D、E、F、G、、、と、5秒程度のゾーンに分割して、学生1人に対し、それぞれ3つのゾーンの制作を担当してもらうことにしました。

制作する映像のお題は、曲のテーマでもある「あべこべさかさま」です。

後は、さぁみんな、自由に作ってみよう〜!という感じです。

だいぶ自由度が高そうです。

はい。しばりは1つ、「あべこべさかさま」だけ。それ以上しばってしまうと逆に面白くないかなと思います。

それぞれの学生が「あべこべさかさま」をどう捉えるかは全く自由ですね。

学生の席には、各2台のモニタが置かれている。
1台は自身が使用するマシンの画面が、もう1台は講師のマシンの画面が表示される。

制作に使用する基本ソフトは、After Effects になります。

そこに手書きアニメーションを加えたり、エフェクトを重ねたり、色を変えたり、3Dソフトや After Effects プラグインを使ったりと、合成やタイミングの編集、グリーンバック素材をどう料理するかは完全に学生次第です。

大学内のコンピューターに加え、自分が所有ラップトップコンピューターを使用する学生も多い。
学生たちが作成したカットは、講師の燒氏のマシンにアップされ、
燒氏と授業アシスタント (TA) がカットを繋いでいく。

学生たちがカットを作成したら、それを見て順次アドバイス。時間がある限り、作成、チェック、手直しを繰り返して、ブラッシュアップしていきます。

制作に掛けた期間は、週1回3時間で、およそ3ヶ月間になります。

学生にはプロにはない面白いさもありますね。主には課題の捉え方や、発想の部分です。

今回の「あべこべさかさま」なら、例えば、雨が逆に降っているとか、標識のデザインの上下が逆になっているとか。効く効かないは別として、そう来るか〜という発想があります。

さて、実際に PBL を行う学生たちはどんなことを行い考えているだろう。話を聞いてみた。

学生の感想:和田大樹 (わだ たいき) さん

PBL を実際にやってみた感想を教えてください。

和田さんは、自宅にあるパソコンをリモート接続して学内で操作している

PBL でよかった点は、自分のアイディアを形にしたり、自分が格好いいと思うものを自由に作れることです。

僕は、今回の PBL で、はじめて After Effects プラグインの Trapcode を使ったのですが、とても面白いです。活用したのは、Form、Starglow、Mir、Sound Keys です。主に人物を変形させたり、粒子化させたりする効果に使用しました。

プラグインの使い方は、主にWebのチュートリアルビデオを参考に見ながら覚えました。ほぼ英語のチュートリアルですが、絵を見れば分かるので不便は感じません。

学生の感想:佐藤海里 (さとう かいり) さん

僕は、普段は Maya がメインツールのフルCGのアニメーションコースを専攻しています。今回の PBL は、3DCG の課題として、3DCG のアプローチを用いてミュージッククリップの映像制作に携わるという形でジョインしています。

担当したパートでは、Maya で作成して動かしたモデルを After Effects でエフェクトを掛けています。フルCGのコースでは、After Effects はあまり使いませんが、Maya で書き出したCGを カラーコレクションしたりすることがあります。

PBL を実際にやってみた感想としては、映像の動きを音を合わせることが難しくて、そこをもっと頑張りたいと思っています。またCG以外のPVの作成にも大変興味を持ちました。

学生の感想:保高隆成 (ほたか りゅうせい) さん

僕は高校生の時に映像制作をはじめました。当初は動画サイトでの反応に喜びを感じていましたが、今は映像のクオリティーを上げることにやりがいを感じています。

高校生の時は、フリーの動画作成ソフトの「AviUtl」を使って「AMV (アニメ映像を切り貼りしてつなぎ好きなBGMをつけた動画)」を作っていましたが、クオリティーを上げるためにモーショングラフィックスを勉強して、そこから After Effects に入りました。今はCGに興味を持っていて、学生版の CINEMA 4D を独学で勉強しています。

燒講師の授業で印象に残ることは?

よく授業のはじめに、燒先生がお薦め動画を紹介してくれるのですが、80年代、90年代と古いものが多いんです。当時評価されていた動画は、いろいろヒントになりますが、正直僕はあまり格好良くないなって思うものもあります。先生はすごく格好いいと言うんですけど (笑)

制作で悩んだりしたときも相談に乗ってくれますし、作成したものを見てもらうと、大体褒めてくれます。先生に見せることが、作るモチベーションにつながっています。

PBL の目的

学生が作成した映像をチェックする際に、具体的にどのようなアドバイスをされるのでしょう?

基本的には、よほど違わない限り、駄目出しはしません。
「そういう風にするなら、こうするともっといい」といった感じで、よりよくなるようなヒントを伝えてるようにしています。

プロなら、作ったものが全部NGということもありますが、学生の場合は、あるレベルに達していればOKとします。

逆に様々な学生が作成した映像を、プロミュージシャンのミュージッククリップにそのまま使用できるものでしょうか?

もちろん、全員作ってくれたから、その全カットを完成品に入れます、というわけではありません。クオリティーが足りないものは、最終的にカットしますし、学生にもあらかじめそう伝えています。最終的にはミュージシャンの映像になるので、それはもう仕方がない。

もともと学生たちに、プロのように、全体的なクオリティーの高さや、一つ一つのカットのテイストにこだわって見せることを求めるのは限度があります。

今回の PBL では、最終的に学生たちが作成した映像素材が出揃ったら、
素材の選抜や編集、色付けなど最終の仕上げ作業は燒氏と授業アシスタント (TA) が行う。

そこで、今回の PBL のミュージックビデオに置いた主軸は、いろいろなテイストの映像が雑多に入って来る面白さです。

一つ一つのカットがピンピンに尖っていなくても、いろいろな個性の様々な要素が、多彩に混じり合ってできる世界観の面白さが出ればと考えました。

この意図は、事前にミュージシャンにも了解してもらっていますし、完成物でもそのよさが出るように僕と授業アシスタント (TA) が最終調整をしていきます。

完成作品で使用する素材は学生の作成したもののみ。新たな素材は追加しない。

PBL 事例

PBL はよく行うのですか?

映像制作演習のクラスでは、これまでもいくつかの PBL を行っています。
例えば、JAXA のプロモーションムービーを作成しました。こちらは海外のイベント会場で上映するものでした。
パスピエ「YES/NO」Music Video 最優秀作品 (Warner Music Japan)

2015年には、ワーナーミュージック所属のパスピエの楽曲、「YES/NO」のミュージックビデオを PBL で作成しています。

この時は、クラスを4、5人のチームに分けた全4チームで作品を作成、発表して、最優秀作品をWebで配信するという企画を行いました。

最優秀作品は、パスピエの「YES/NO」の公式のミュージックビデオになっています。

また「YES/NO」のミュージックビデオでは、更にiPhone の映像を3層のレイヤー構造のホログラムのような映像に加工するガジェット「パームトップシアター」を活用するというお題もこなしています。

PBL の意義

今回作成した PBL は、Webで公開して終了となるわけですね?

もちろんWebでの公開も最終目的ですが、PBL の大きな意義は、PBL で作成した作品を、学生たちのポートフォリオとして活用してもらい、就職時の評価につなげてもらうことです。

学生が、自己紹介映像のみのポートフォリオで、オリジナリティーを出すのは難しいし、ピンと来ない場合が多い。そこにプロのミュージシャンのミュージッククリップで担当したショットが入ると見栄えも華やかになると思います。
これは PBL を行う大きな理由の一つですね。

PBL はどのように企画されていますか?

これまでの PBL は、僕が仕事でお付き合いのある方々や企業に協力を頂いて行ってきました。

極論ですが、ソフトウェアの勉強は僕が教えなくても YouTube でできてしまいます。

であれば、僕が学生と組めるいい案件をプロデュースして、ここでしかできない映像制作の機会をできるかぎり作りたいと思っています。

この PBL を行うことは、講師としてもとてもやりがいがあります。

燒さんはデジタルハリウッドでの講師歴は長いのですか?

今年が4年目です。

実は僕は、デジタルハリウッドのOBなんです。大学4年生の時、デジタルハリウッド(専門スクール)にダブルスクールで通いました。その卒業制作を、セガの募集に送ったところ採用され、セガでCGデザイナーを、続いてナムコでモーションデザイナー、その後制作会社などを経てフリーになりました。そしてナムコ時代から仕事と並行してやっていたVJの縁もあって、現在の GROUNDRIDDIM に所属しました。

デジタルハリウッドの講師になったのは、数年前、この GROUNDRIDDIM で手掛けた YMO のVJがきっかけでした。
ステージも無事終了し、これを何かつなげらたらなと思っていたところ、デジタルハリウッドの杉山学長が YMO ファンだという話を聞きつけて、学長に報告に行ったんです。杉山学長にはとても喜んで頂いたのですが、丁度その時、デジハリが映像の講師を募集していたことから、講師を務めることになった訳です。

自分で勉強できる環境がある現在、学校に行くメリットは何でしょう? 燒さんの意見を聞かせてください。

今、学校に通わなくても勉強はできる。そのことは多分、みんな気付いている。それでも、学校に行く意味はあると思います。その一つが、アウトプットの機会です。

インプットはもちろん重要ですが、幾らインプットしても、最終的にアウトプットしなければ実力は付きません。

重要なのは、こういう講座を何時間受けたということではなく、そこで身に付けた技術を使って、何を作ったか、作れるかだと思います。

そんなアウトプットの機会が、今回のようなPBLです。
学校が学生に対して、そこでしか得ることのできないアウトプットの機会を提供できることは、学校へ行く意義にもつながるのではないでしょうか。

もう一つが、仲間です。

同じものを目指す仲間を持つことは、自分にとってかけがえのないものです。

僕自身、デジハリで出会った友人たちと仕事することがあります。最終的に業界に残る人数はしぼられていくと思いますが、同じ方向を向いている人たちだから、就職した後もつながっていくと思います。例えば、俺が撮影やるから、お前は編集やってとか、あいつにCG作ってもらおう、といった感じです。
学校は、そんな生涯の仲間を作れる貴重な場所ではないでしょうか。

学生の方たちには、いい意味でどんどん学校を活用してもらい、未来の映像を担う作り手になってもらいたいです。

デジタルハリウッド大学について

映像、3DCG、アニメ、ゲーム、プログラミングなどクリエイティブに関する様々な専門領域を融合して学ぶことができる4年制大学、それがデジタルハリウッド大学である。

その規模は現在、在学生1000名、教員総数100名を超え、毎年多くの人材が実践の場へと巣立っている。

1学部1学科の中では、体系的かつ段階的に学べる独自のカリキュラムを設置され、4年間を通し高度な専門性と国際感覚、教養、社会性を養い、新しい未来をつくり出す人材が育成されている。

映像のカリキュラムでは、企画から実写撮影、デジタル編集、映像ビジネスまでを幅広く学ぶことができる。

【デジタルハリウッド大学】詳細はこちら

創造のシナプス【GROUNDRIDDIM × C (VJチーム)】