【VIDEO COPILOT LIVE! 2016】イベントレポート

 2016.11.9 WED | EX THEATER ROPPONGI

Video Copilot 社の創立者、Andrew Kramer (アンドリュー クレイマー) 氏のセッションを軸としたスペシャルライブイベント【VIDEO COPILOT LIVE! 2016】を、去る 2016年11月9日 (水)、東京六本木の EX THEATER ROPPONGI にて開催した。

2014年5月開催の「Video Copilot セミナー」からはや2年。今回、二度目の来日を果たした Andrew 氏は、ステージ上でスローモーションの物取り撮影を生実演。またステージ上で撮影したグリーンバック素材を使い Element 3D 次期バージョンでの合成テクニックを紹介するなど、新たな試みに挑戦。長時間に渡るライブセッションは、Andrew 氏の映像制作に懸ける熱い想いを来場者に伝播させるエンターテイメントショーとなった。

更に、映画「スター・トレック BEYOND」のVFX制作にも携わったアーティスト、佐藤隆之 氏は、自身のショートフィルムの新作「Beyond the moment of beauty」の制作プロセスを紹介。
そして、プラグインチュートリアル「Effect Recipe」でもおなじみの緒方達郎 氏総合演出による、ダンサーと映像を組み合わせたインスタレーション「BEYOND」が会場を華やかに盛り上げた。

各ステージのビデオアーカイブと共に、是非本イベントを追加体感頂きたい。

800人に及ぶ映像クリエイターが集う

普段はプロミュージシャンのライブや、演劇の公演が行われる巨大な EX THEATER を、800人に及ぶ映像クリエイター達が埋め尽くした。
つかの間とはいえ、六本木に映像クリエイターばかりが集結した空間が出現するというのも稀有なことであろう。

オープニング

はじめにフラッシュバックジャパンの高山、ケビンから来場者の方々へ歓迎の挨拶。
そして、幕開けを飾ったのは、ヴォーカリスト"市川愛さん"によるミュージックパフォーマンスだ。

来場者の方々も、映像クリエイターに向けたイベントでバンドの演奏を聴くことになるとは思いよらなかったであろう。

一般的なセミナーでは味わえない愛さんたちの熱い演奏に、会場の熱気も自然と高まっていく。

ミュージックパフォーマンスの終了後、司会の 緒方達郎 氏による挨拶。市川愛さんと、ゲスト 佐藤隆之 氏を紹介。
そしてメインゲスト Andrew Kramer (アンドリュー クレイマー) 氏の登場だ。
Andrew「わたしがデザイン、アートといった仕事の中でも最も好きなことは、このように多くの人達と出逢えるイベントです。今日は、単に、技術的なテクニックを見せるプレゼンテーションにとどまらならいエンターテイメントのステージになるよう準備をしてきました。まだほかでは見せたことがないプラグインの話もします。みなさんの頭がパッと弾けることを期待しています!ショーを楽しんでいってください!!」

インスタレーション「BEYOND」

ライブイベント、第一のステージは、インスタレーション「BEYOND」。
壮大で幻想的な空間をイメージさせる映像と音楽、そこに重なるスモークやレーザーの光の演出、またそれら一連の動きに合わせ、女性ダンサーが実際に舞台で踊る。インスタレーション「BEYOND」は、そんな総合的な舞台演出の作品である。

ではアーカイブビデオにて、インスタレーション「BEYOND」をご鑑賞頂きたい。

BEYOND (premiered at Video Copilot LIVE! 2016 @ EX Theater Roppongi)

今回の【VIDEO COPILOT LIVE! 2016】を盛り上げるために企画された本インスタレーション。

ビデオではその奥行き感が伝わり難いが、まさに奥行きある空間に描かれた作品を体感するステージとなった。

実は女性ダンサーは、二人登場している。

舞台では、ステージ上で踊る一人が床の上で天を仰ぐと、続いてその身体が浮き上がり宙を浮遊するかように見える。

床上のダンサーから、あらかじめワイヤーをセッティングしてスタンバイしていたもう一人のダンサーに視点が移動するという訳だ。その乗り替わりが大変美しい。

当初 Video Copilot の世界観をイメージさせるような宇宙船のプロジェクションマッピングなども検討されたが、最終的に EX THEATER ROPPONGI の大きなステージ空間ごと、人を超越 (BEYOND) した存在、世界を観せる表現に挑んだ。
大掛かりな演出のため、演者やスタッフ含め、最終的な仕上がりを見れたのは本番直前となった。

日頃モニター上の2次元的映像を作成することが多い中、その2次元的枠を超え、空間全体に対して多次元的演出を行えないかという新しい試みは、大変新鮮で刺激的なものとなった。

今回の試みに、映像業界を越え幅広い分野のアーティストが参加。様々なプロフェッショナルが融合し得た瞬間でもあった。
本プロジェクトの制作過程については、また機会をあらためて紹介したい。

舞台演出・コレオグラファー : Yumiko先生 a.k.a MTP
ダンサー:矢島 奈央子
エアリアル:福田 麻智子
ワイヤー演出:國米 修一
サウンドコンポーザー : 鈴木 夢時
コーラス:柴田 綾香
サックス:岸田 智久
レーザーエフェクト : Laser Hayashi (Wonder Wall Inc.)
Wonder Screen提供:Wonder Wall Inc.

CG制作: Composition Inc.
デザイナー/アニメーター:岸田 智久、松岡 勇気、緒方 達郎
ビジュアルエフェクツ:今井 了、酒井 菜月
キャラクターアニメーション:加速サトウ
コンセプト&マットペイント:宮 真一朗
アートディレクター : 佐藤 隆之 (OTAS.TV)
総合演出・ディレクター : 緒方 達郎 (Composition Inc.)

佐藤 隆之 / OTAS.TV セッション 1:
〜 スター・トレック BEYOND エンディング宇宙の制作プロセス 〜

続いて、ライブイベント二幕目。

モーショングラフィックス界の老舗 Prologue Films にて、数々のハリウッド映画のタイトルシーケンスやVFX、TVCM、TV番組のタイトルアニメーション制作などを手掛けているアーティスト、佐藤隆之 氏によるセッションである。

セッション前段は、2016年公開の映画「スター・トレック BEYOND」エンディングシーケンス、重なり合うネビュラ、星雲を高速で突き抜けていく濃艶で重厚なVFXを、制作期間、僅か3週間(3Dステレオ版にプラス1週間)という短期間で完成させた超絶テクニックが紹介された。

Video Copilot Live! 2016:佐藤隆之氏 セッション1
〜 スター・トレック BEYOND エンディング宇宙の制作プロセス 〜

この宇宙空間の映像は、Prologue Films 創設者、カイル・クーパー氏から発注された案件だ。

カイル氏からのリクエストは次の通り。

1、ディテール感のある宇宙
2、スケール感の大きい宇宙
3、尺はできるだけ長いほうがよい
4、Use your Magic

制作期間が短いこともあり、まず佐藤氏が取り組んだのは、より効率的な制作方法の模索だった。考慮したのは次のポイント。

1、スケジュールを逆算してどのような演出ができるか
2、宇宙 (特にネビュラ(星雲)や惑星) を何でどのように描くか
3、スケール感、奥行き感をどのように出していくか

このポイントはもちろん、制作事前に何をやるべきかを的確に絞り込むこと、そしてその考慮点を実際の形に落とし込んでいく思考や制作プロセスは大変参考になるだろう。

まず10秒から15秒の4つのイメージを作成。

カイル氏との確認の後、ブラシュアップを続け、最終的なOKが出たのは、僅か期限の3日前!
レンダリングを行い無事完成させた。

映画制作の場合、そのテイク数は、50や100とすごい数になるそうだ。そのため3D感を維持しながらも、後の調整修正が行いやすい構成を選択した。

具体的に、アニメーションはスケール感を出すため、オブエジェクトの位置やサイズ関係、カメラの動きがコントロールしやすい3Dソフト (Cinema 4D) で制作。

Cinema 4D で作成したカメラの動きとヌルは After Effects で読み込み、設定したヌルに Turbulence FD を活用したCG版のネビュラやNASAなどの実写写真をリンクさせ、宇宙空間を作り込んでいった。

少しでもレンダリング時間を稼ぐため、近づいていくところだけディテールを追加する手法をとった。

今回作成した宇宙空間には、Element 3D でリアルな惑星を作成できる Element 3D用 3Dモデルの素材集を活用している。

この3Dモデルは販売もしているので、興味がある方は以下を参照頂きたい。

「Locus Pack 」
「Fractal Rama」

Optical Flares は、時間を掛けず、宇宙の世界観を作るのに役立つツールの一つだとのこと。ソースタイプを3Dにすると、フレアの動きが3D空間上に出てくるので格好いい演出ができる。

佐藤 隆之 / OTAS.TV セッション 2:
The Beauty 〜 新ショートフィルムの制作プロセス 〜

そして、自身約2年半ぶりとなる自作ショートフィルムの新作「Beyond the moment of beauty」からシーンを初公開。
各作品の制作プロセスを紹介する。

まずはその荘重で美しい完成作品の世界観をご覧頂きたい。

Video Copilot Live! 2016:佐藤隆之氏 セッション2
The Beauty 〜 新ショートフィルムの制作プロセス 〜

「the moment of beauty」の完成後、あらたな続編の作品の制作に挑んだがなかなか進めることができなかった。

はじめに作成したスタイルフレームでは、ストーリーが散漫になっために一時中断。

続いてテーマを Galaxy に絞った第二弾を用意、最終的に第三弾のスタイルフレームで方向性を決定し、実制作に入った。

まずスタイルフレームのイメージに、モーションが加えられたテイクが作成される。

ここで用意された3Dのキャラクターが、撮影された人物に置き換える。

2016年10月、スタジオ撮影が行われた。

またシーンの一部で使用された Video Copilot 社の無償プラグイン Saber の活用例を披露。

Saber は、通常、2Dレイヤー内での制御となりるが、次のエクスプレッションを使うことで、Saber を2Dレイヤーを超えて3D上でコントロールすることが可能だ。

エクスプレッションは以下の通り

A=thisComp.layer("Null名");
fromComp(A.toComp(A.anchorPoint));

開始点 From の3Dヌルから、終了点 To の3Dヌルに向けて Saber をつないでいる。

佐藤氏が紡ぎ出す圧倒的に美しいイメージ・世界観が、高度なテクニックによって緻密に織り上げられた傑出の一品である。
多忙な中、多数の仕事の依頼を断りながら、スジェジュールを捻出し、自作を完成されたアーティストの気概に敬服する。

Andrew Kramer セッション: オープニングトーク

いよいよメインゲスト Andrew 氏が登場!
スーツ姿で決めた Andrew 氏は、登場も華々しい。

Video Copilot Live! 2016:Andrew Kramer セッション - オープニングトーク
オープニングでは、Andrew がはじめて映画制作に関わった際の失敗談と、その経験から果たした自己の意識変化を告白する。

Andrew Kramer セッション: 物取り撮影の実演

そしていよいよ Andrew のセッション!
導入部では、グリーンバックの前に立った人物の撮影を実演。
前回のイベントではなかったステージ上での撮影に、これから何が起きるのか会場の期待も高まる。

人物は収録後に3Dトラッキングできるよう、背景のスクリーンと前面のライトスタンドにガイドのマーカーが置かれている。
このステージにて収録したグリーンバックの素材は、すぐさまドイツでスタンバイしているエンジニアに送られ、セッションの間に3Dトラッキングの処理が行われる。そしてセッション後半、Element 3D のプレゼンテーションに再び登場する!

続いて Andrew 氏 が箱から取り出したものは、、、なんと真っ赤なエプロン!(エプロン姿も似合っている)
そして始まったのは、クッキングショーならぬ、物取り撮影の実演だ!

Video Copilot Live! 2016:Andrew Kramer セッション - 物取り撮影の実演

まず用意されたのは、マクロレンズをつけたカメラ。

これでクローズアップの撮影を行うわけだ。

そして、照明と台。
台の上には水槽。
そして注射器とカラーインク。。。

このカラーインクを、水槽の水に注ぎ込んでみると───

そして、スローモーションで再生すると、、、
WOW、ファンタスティック!

使用したカメラはRED。フレームレートは120fps。

コンピューターグラフィックの様々なツールを提供する Video Copilot 社は、コンピューターでは再現が難しい実写素材の作成にも積極的に取り組んでいる。

その素材撮影を、今回生ライブで見ることができたのだ。

注目!この Andrew 氏 の楽し気な表情を!

続いて取り出したのは、スピーカー。

その振動板の上に、カラフルなチョークの粉をセッティングする。

スピーカーに連動させた iPad で音を鳴らすと ───

振動がチョークの粉を飛び散らせる!

1色だと動きが予想できただろうか?では、2色、3色ではどうだろう?
Andrew 氏の好奇心は尽きることがない。

液体 (インク)、そして粒子 (チョーク) 、それら物質の想像を超えるスーパーナチュラルなスローモーション ─── その有機的な美しさに素直に引き込まれる。

この撮影実演、単にCGを制作する、その技術的テクニックを学ぶ、だけでなく、何よりも Andrew 氏の撮影や映像制作を楽しもうよ!またこれを撮影したら一体どうなるのか見てみようよ!挑戦してみようよ!という好奇心、映像制作に掛ける想いを感じるものとなった。

Andrew Kramer セッション: 8-bit プラグインの紹介

Video Copilot Live! 2016:Andrew Kramer セッション - 8-bit プラグインの紹介

本イベントの来場者に無償プレゼントされたフリープラグイン ─── それが、8bit だ!
プラグイン 8bit では、イメージを、例えばゲームボーイ調に加工することができる。

アンドリュー「8bit に加工するプラグインを作ろう!」
開発者のセルジオ「そんなプラグイン、誰が使うの?」
アンドリュー「僕が使いたいんだよ!」

そう。Video Copilot のプラグインは、そんな Andrew の素朴な欲望から誕生するのだ。。。

Andrew Kramer セッション: トラッキングデータの合成

Video Copilot Live! 2016:Andrew Kramer セッション - トラッキングデータの合成

そしていよいよ、セッション冒頭で撮影したグリーンバック素材を使い、Element 3D の活用例を次期バージョンの機能を織り交ぜながら披露する。

尚、本セッションで紹介する Element 3D の新機能は、実験段階または開発中の機能のため、Element 3D 次期バージョンの正式リリースの際に変更する可能性があることを留意頂きたい。

グリーンバックの収録素材を、Element 3D で活用するデモンストレーション。
シリンダー状の容器の中でコールドスリープする人物が目覚めるというシチュエーションである。

まず Element 3D のシリンダにキーイング済みの動画をテクスチャとしてはる。
このグリーンバックは、新機能のアルファチャンネルを有効にして抜くことができる。

そして Texture Mapping の新しいモード、Screen space!

この Screen space モードは、テクスチャを実際に撮影した空間の位置を保持できる。つまり、Element 3D に動画フッテージをインポートした際、平面マッピングでなく3D空間でコントロールできるようになるわけだ。

また Reflect Mode の新機能、Refract Surface を使って、シリンダーが凍った曇りガラスのような表現も可能だ。

このサーフェスの曇り具合をアニメートして、コールドスリープが解除されたイメージができ上がった。

このように Element 3D の 3Dオブジェクトの中に別の映像素材、もしくはキャラクター、オブジェクトを置いたヴァーチャルワールドな表現の幅を広げることができるわけだ。

おわりに

ライブイベントは、Andrew 氏からの深い感謝と、今後の Video Copilot 社新製品のリリースを期待する熱気につつまれながら幕を閉じた。
今回、イベント名に"ライブ!"と題されたように、何よりも Andrew 氏の映像制作に掛ける熱意が来場者と共有できた一日であった。
Andrew 氏との次なる邂逅、そして映像制作を面白くする Video Copilot 社製品の益々の飛躍を一刻千秋、楽しみにして!

追加レポート:Behind The Scenes

Video Copilot LIVE! 2016 - Behind The Scenes -

Andrew Kramer 氏が、Video Copilot LIVE! 2016 の来日に合わせ表敬訪問したスタジオ「白組」「ポリゴンマジック」での模様や、ライブイベントに至る準備と当日の密着映像、インタビューなどをまとめた Behind The Scenes を同時公開致します。

ご来場頂いたみなさま、そしてイベントの実現、本取材にご協力頂いた全てのみなさまにあらためてお礼申し上げます!