カラーグレーディングで映像をより印象的に表現する方法・其の一

Simon Walker 氏による Magic Bullet Looks 解説

映像クリエイター によるプラグイン解説 "クリエイターズ ビュー"。今回ご紹介するプラグイン、Magic Bullet Looks (マジック ブリット ルックス) は、Final Cut Pro、Premiere Pro、Media Composer、Sony Vegas、After Effects といったソフトウェアのタイムライン上で、高品位なカラーグレーディングを行うソフトウェアです。


カラーグレーディングは、色補正などによって映像をより印象的に仕上げる映像処理の行程です。撮影のロケーションやストーリーといった映像が持つ作り手の意図を、視聴者に向けてより明確に伝えるための表現方法の一つといえるでしょう。


現在、カラーグレーディングには様々なツールがありますが、この Looks の最大の魅力は、通常、基本ツールとして使用しているデスクトップの制作環境上で、本格的なカラーグレーディングを完結できることです。


本ビデオでは、何故、映像制作にカラーグレーディングが必要なのか? Simon Walker(サイモン ウォーカー)氏に、Magic Bullet Looks を使って、カラーグレーディングによる映像の表現方法を解説頂きました。映像制作の参考にぜひご覧ください。

Looksを使ったカラーグレーディング【はじめに】

今回、Magic Bullet Looks を使ったカラーコレクション、カラーグレーディングを解説頂くのは、Adobe 認定マスタートレーナー Simon Walker(サイモン ウォーカー)氏です。 解説では、各セクションごと、5分前後のものを10本ご用意。ビデオでは、何故、映像制作にカラーグレーディングが必要なのかというテーマを踏まえながら、Magic Bullet Looks を使って、素早くカラーグレーディングを行う方法を紹介します。

解説1【基本操作の紹介】

Looks は、専用のインターフェイスを使ってカラーグレーディングを行います。ここでは、Tools 使った基本的な Looks の操作をご紹介します。

例えば Tools の Colorista 3-Way ツール は、カラーホイールを使って、ハイライト、シャドウ、ミッドトーンを調整できます。 カラーコレクションの基本として、コントラストを上げたい時には、ハイライトの値を上げ、シャドウの値を下げます。

更にライトの色を変えることで、元の素材のルックス(雰囲気)を変えることができます。例えば、ハイライトを黄色系の色にすると、晴れた午後をシミュレートします。これにより、撮影時より温かい色を視聴者に伝えることができます。

また、Tools の Ranged HSL ツールで、各カラーごとに彩度を調整する方法をご紹介します。

解説2【人物にフォーカスをあてる方法】

視聴者の注目を人物に集めるカラーグレーディングの手法をご紹介します。高価なレンズやレンズフィルタをエミュレートする 2つの Tools を適用してみましょう。

まず Lens セクションの Vignette(ビネット)。このツールは、注目させたい範囲(ここでは人物)を円で指定しハイライトさせ、その外側の範囲を暗くする効果です。

この効果に組み合わせるのが、Lens セクションの Edge Softness(エッジ ソフトネス)。このツールは、注目させたい範囲を円で指定し、その外側にブラーを掛けます。円の内側にはブラーがかかりません。つまり人物のディテールを保持したまま、外側だけピンぼけにします。

これらの処理によって、視聴者にイメージのどこに注目してもらいたいかを明確に伝えることができます。

解説3【プリセットを使用する】(プリセットの適用、変更、保存方法)

Looks の素晴らしい機能の一つが、あらかじめ100種類以上のプリセットを搭載し、1クリックで元素材を様々な色調に変えられることです。もちろんこれらプリセットを元に調整したり、新たなカスタムプリセットとして保存することもできます。ここでは、プリセットの例をご紹介します。

例えば、Sharpen は、コントラストを調整し、イメージのディテールを引き立たせます。これらは目に見えない効果で、グレーディングをあまり適用せずに、イメージのルックを改善します。

Bleach Bypass は、映画「プライベート・ライアン」などで活用された"銀残し"を再現します。彩度を落としてシャドウをより暗くして、ドラマチックなイメージにします。

ほか、イメージをロマンチックな感じにしたり、かすんだシーンにしたり、数十年前に処理された古いフィルム風にしたり、様々な雰囲気を自由に演出できます。

解説4【サードパーティープリセットの紹介】

Magic Bullet Looks には、デフォルトで搭載するプリセット以外にプリセット集があります。

その一つに私がデザインした Master Artists プリセット集があります。これは、有名な画家の作品の色をベースに作成しました。ルネサンス時代の画家や、印象派の画家など、古典絵画のルックスから導かれたスタイルを収録します。

こららのプリセットを使うことで、自分で一からグレーディング作業をせずに、イメージのルックや雰囲気を、わずかワンクリックで簡単に適用できるようになります。

解説5【肌をレタッチする】

人物のスキンレタッチについて、2つのアプローチをご紹介します。

1つ目。Subject セクションの Cosmo ツールは、肌の範囲だけを検出し、レタッチできる効果です。目や唇のシャープネスは保持したまま、肌の色合いのみが調整できます。この Cosmo で肌をソフトにし、ハイライト部分のピンクと紫を強めると、ロマンチックなルックになります。また Post セクションの Ranged HSL ツールを使って、唇の彩度だけを上げてみましょう。

2つ目。逆に顔の質感を引き出したい場合は、Post セクションの Pop ツールを適用します。パラメーターをプラス値にするとシャープになり、顔の質感が上ります。(マイナス値はディテールをソフトにします。)更に、Hue/Satoration を適用して彩度を80%くらいに下げ、Vignette を適用すると、よりドラマチックなイメージを作ることができます。

解説6【フィルム調のグレーディング】

Looks を使用し、フィルム調のルックをシミュレートする方法をご紹介します。

基本となるテクニックは、Subject セクションの Curves ツールを使用します。Curves ツールの、Contrast(コントラスト)パラメーターを上げると、ハイライトがより明るくなり、シャドウを暗くします。

これに加え、Matte セクションのディフージョン効果を適用します。私は、イメージの明るい部分をより強調する Summer Sun ツールをよく使います。これにより、太陽が注いでいる感じを演出します。フィルムのライティング処理に似ています。

暗いシャドウ、明るいハイライト、そして拡散されたライトは、フィルム調のルックを演出するのに使われます。

解説7【色調で雰囲気を変える】

色調によって伝える様々なストーリーを見ていきましょう。

まずコントラストを上げ、シャドウとハイライトを強調すると、映像はよりドラマチックになります。なぜなら、人はイメージのディテールをよく見る傾向があるためです。最初に黒と白を見て、次にカラーを見ます。逆に低コントラストは、フレンドリーなイメージになります。ドラマの要素の少ない、優しい感じのイメージで、コメディーなどに使用できます。

また1つのカラーを使用して感情を変えることも可能です。映像に黄色や特にピンクをイメージに加えると、暖かい感情を示し、ロマンスや、ロケーションや人物に対するポジティブな感情を加えます。逆にハイライトの1つのカラーを調整し、ピンクから青に変えるだけで、ロマンチックからシリアスな感じにできます。これは多くの色調変化が、物理的にイメージのハイライト部分で行われるためです。更にハイライトの色を変えるだけで、シーンの時間帯を変えることもできます。

解説8【カラーを引き出す】

ここでは、あまり"カラコレ感"を出さないようにしながら、カラーを引き出し、ポップにする方法を紹介します。

プリセットをベースに、効果をつけていきましょう。まず、私が好きなプリセットの、Vibrant を適用。このプリセットは、色調を引き出します。コントラストを少し上げながら、Saturation ツールでカラーを引き出します。

イメージをポップにしたいならば、彩度を高めます。彩度を高めたい場合は、Hue/Saturation ツールで、Saturation を100%以上にします。過度なグレーディングにしたくないので、ここでは Saturation を120%くらいに設定します。

更にLens セクションにある Vignette ツールを使用します。このように過度なカラーグレーディングをせずに、視聴者の注目を人物に集める調整ができました。

解説9【イラストのグレーディング】

素材のカラーを分離して、特定の色だけを強調するグレーディングの手法を紹介します。

プリセット、Monochromatic カテゴリの Warm Isolation は、赤とオレンジだけ分離させ、その他カラーをモノクロにします。これは、Ranged HSL ツールで、赤とオレンジ以外の黄色、緑、紫、青の彩度を減らしたことによる効果です。例えば赤の彩度を減らす場合には、赤のポイントを中心に近づけてください。また、赤のポイントをホイールの外側にすると、赤の彩度が上がります。このテクニックは、カラーの範囲が近いイラスト素材などでは、役立ちます。ほか Red Solo というプリセットは、赤以外のカラーを分離させます。

加工したルックスは、独自のカスタムプリセットとして保存できます。Look Name を箇所をダブルクリックして、プリセット名称を入力します。プリセットは、同じマシンにインストールされたホストアプリケーション、例えば Photoshop などで共有できます。

解説10【モーショングラフィックのグレーディング】

Looks は、一度作成したモーショングラフィックの背景色を、全く違うカラーに差し替えて欲しいというリクエストに素早くこたえることができます。その方法をご紹介します。

まず Tools の Saturation ツールを適用して、Saturation パラメーターを0%にし、彩度を減らします。これにより、一旦映像は白黒になります。次に、Warm/Cool ツールを適用して、使用したいカラーに調整します。またMatte セクションにある Gradient ツールは、イメージにグラデーションを適用することができます。グラデーションの範囲、色調、方向、強度を調整してください。

このワークフローは、モーショングラフィックの元のプロジェクトファイルを開いて作業するよりも、効率的です。更に、注目させたい範囲を Spot Exposure で調整し、Edge Softness でエッジにブラーをかけ、Pop ツールでディテールを更にソフトにする行程をご紹介します。

おわりに

以上、カラーグレーディングによって映像が持つルックス(雰囲気)はどう変わるのか、そしてそのグレーディング処理を Magic Bullet Looks ではどう表現させるのかを、同プラグインの基本的な操作を踏まえてご紹介致しました。

尚、この Looks 編に続いて、より正確なカラーコレクションを実現するプラグイン、Colorista II の解説【カラーグレーディングで映像をより印象的に表現する方法・其の二/Simon Walker 氏による Colorista 解説】の公開を予定しております。近日公開の予定です。ご期待ください。

解説:Simon Walker 氏のご紹介
イギリス出身のカラリスト/映像クリエイター。映像業界において18年以上のキャリアを持ち、現在はアドビ認定トレーナー、アップル Final Cut Pro 認定トレーナー、ICA(International Colorist Academy)の講師などとして幅広く活躍している。

Web:simonwalkerfreelance.com
Twitter:@simonwalker

Simon Walker 氏によるビデオ解説 "クリエイターズ ビュー":
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