カラーグレーディングで映像をより印象的に表現する方法・其の二

Simon Walker 氏による Colorista 解説

映像クリエイター によるプラグイン解説 "クリエイターズ ビュー"。今回ご紹介するプラグイン、Red Giant Colorista (レッドジャイアント カラリスタ) は、高度なカラーコレクション、色補正処理を実現するプラグインです。

この Colorista は、主に作品 全体のカラーグレーディングを施す前に、クリップごとのカラーのミスマッチを解消し、カットの整合を行う色補正で力を発揮します。

Colorista で特に 注目したいのは、例えば空や前景の人物だけなど、ある特定のエリアだけを指定し、その領域のみに色補正を掛けられる機能です。このマスク機能によって、例えば空だけの彩度を上げてより鮮やかにしたり、潰れた人物だけを明るくしたりすることが手軽にできます。

解説は、【Magic Bullet Looks 解説】 に引き続き、Adobe 認定マスタートレーナーの Simon Walker(サイモン ウォーカー)氏です。Colorista でカットごとの整合が取れた後は、Looks でのカラーグレーディングをお試しください!

解説1【基本操作の紹介】

はじめに Colorsita の基本的な操作方法をご紹介しましょう。Colorsita には、主に Primary、Secondary、Master の3つのセクションがあります。

Primary セクションでは、3-way カラーホイールの使い方、シャドウやハイライトの変更、露出の調整、Primary HSL を使用した個別カラーの調整等を紹介します。

Secondary セクションでは、特定のカラーでマスクを作成できます。Edit ボタンをクリックするとキーヤーが開きますので、イメージ内で補正したいエリアを選択します。

Master セクションには、イメージ全体を調整できるトーンカーブなどを搭載します。

解説2【露出を修正する】

Colorista のマスク機能を使った色補正をご紹介します。

ここでは、背景が白とびし、反対に前景の人物が潰れてしまったクリップを例にとり、その潰れた人物だけを明るくする補正を行います。

マスクは、Secondary セクション の Colorista keyer(キーヤー)で調整します。このキーヤーの利点は、Hue(色相)、Saturation(彩度)、Lightness(明度)をベースにマスクを作成できることです。

マスクを作成すると、Secondary セクションで行ったカラーコレクションが、マスク部分だけに適用されます。

マスクができたら、ミッドトーンを上げて全体を明るくします。更にディテールを上げるためシャドウを落とし、ハイライトを少し上げると、潰れた人物のディテールが上がります。

解説3【色調で雰囲気を変える】

カラーコレクションで、雰囲気を変えたり、季節を変えたりすることができます。

ここでは、夕方に撮影された暗く青みがかった景観を、秋を感じさせる景観に変えてみましょう。

Primary 3-way のカラーホイールを使ったカラー調整を行います。シャドウのカラーホイールのカラーを赤色に近づけると共に、ミッドトーンを赤茶色にします。
続いて、Primary Exposure の値を上げ、全体の露出を調整します。

これにより、カラーを黄色やピンクにすることなく、赤の彩度を変更し、木の葉の美しい茶色を引き出します。

解説4【人物のカラー&コントラスト調整】

Looks 解説8【カラーを引き出す】でもご紹介しましたが、一見しただけでは効果が判らないほどのカラーグレーディングで、シーンをより鮮やかに見せる方法を、Colorista の機能を使ってご紹介します。

まず、コントラストを変えると、イメージがディテールを持ち始めます。Primary の 3-way カラーホイールでハイライトを少し上げ、逆にシャドウを落とします。(または Master Curves の RGB Contrast の値を上げます)
続いてイメージ全体の彩度を上げます。Master Saturation コントロールをドラグします。ショットのカラーがより前に出ました。更にSecondary セクション のPop ツールでも彩度を変更せずに、コントラストが上げることができます。

とてもわずかな効果ですが、イメージのカラーとコントラストを引き出すことで、イメージの見た目をより美しく見せることができます。

解説5【顔のレタッチ】

時にはベストな環境で撮影できず、狙い通りの画にならない場合があります。そんな時、Colorista を使ってポストプロダクションの補正を行いましょう。ここでは、影の出かたによって、人物が疲れたように見えてしまう場合、顔の部分のシャドウだけを隠す方法をご紹介します。

Secondary セクションのキーヤーのEdit をクリックしてください。Colorista 解説2【露出を修正する】と同様に、肌のカラーを選択して、肌のマスクを作成します。続いて、Pop ツールをマイナス値にすると、肌のエリアがアンシャープになり、シャドウが滑らかになります。

この調整はカラーに対して行われるため、キーフレームが関係ないことも利点の一つです。フレームを変えても、マスクは自動的に肌のトーンを検出します。

更にMaster セクションの Master HSL ツールを使って、唇の赤だけを強調する方法をご紹介します。

解説6【異なるホワイトバランスの動画を合わせる】

収録素材のカラーのミスマッチの一つに、ホワイトバランスが異なるケースがあります。
Colorista は、たった1クリックで、このホワイトバランスの補正を行い、カットごとのミスマッチを解消します。

例えば、他のカットに比べてオレンジ色が強いクリップを補正する場合、まずはハイライトのカラーホイールを青色にするやり方が考えられます。しかしこの方法は、正しいショットと見比べながら手動で作業するため、時間が掛かってしまいます。

そんな時は、Colorista の Auto Balance ツールを使用します。

手順は簡単。Auto Balanceのカラーピッカーを選択して、イメージ内のホワイトと思われる範囲を選択するだけです。すると、ハイライトのカラーが自動的に調整され、黄色の"色かぶり"を補正する、青色の値になります。

"カラーが伝える様々なストーリー"
緒方達郎氏による【Simon Walker 氏インタビュー】

エフェクト解説 Effects Recipe でもおなじみの緒方達郎氏による Simon Walker 氏へのインタビューをご紹介致します。

Simon 氏は、日頃、アメリカのポストプロダクションワークフローのトレーナー兼コンサルタントとして映像の制作現場に携わられています。その普段の活動から、アメリカ放送局の現場でも Looks や Colorista が活用されている現状や、4KやDIT(デジタル イメージング テクニシャン)など昨今の映像業界のトレンド、ハイエンドな機材に限定せずにカラーグレーディングができるようになった傾向などについて話を聞きました。

更に絵画や映画に見るカラーグレーディングの活用例や、事実をありのまま伝えたい時にもカラーグレーディングが必要なのか?など、カラーの"言語"、カラーが伝える様々なストーリーに関して盛り沢山に語って頂いています。
昼休みなど息抜きのお供にご覧ください。

おわりに

Magic Bullet Looks と Red Giant Colorista、この二つのカラーグレーディング プラグインの基本的な概念や操作方法を解説しながら、カラーグレーディングやカラーコレクション(色補正)の活用方法をご紹介しました。

予算やスケジュールなど様々な都合で、撮影時に狙った画が撮れないケースは多々あると思います。撮影後、全てのカットをプリプロダクションレベルに加工し直すことは難しいかもしれませんが、ある程度の補正なら Magic Bullet Looks や Colorista のようなデスクトップでのポストプロダクションで行うことが可能です。
これらご紹介したプラグインが、皆様の作品作りの一助になれば幸いです。

解説:Simon Walker 氏のご紹介
イギリス出身のカラリスト/映像クリエイター。映像業界において18年以上のキャリアを持ち、現在はアドビ認定トレーナー、アップル Final Cut Pro 認定トレーナー、ICA(International Colorist Academy)の講師などとして幅広く活躍している。

Web:simonwalkerfreelance.com
Twitter:@simonwalker

Simon Walker 氏によるビデオ解説 "クリエイターズ ビュー":
・カラーグレーディングで映像をより印象的に表現する方法・其の一 【Simon Walker 氏による Magic Bullet Looks 解説】
・カラーグレーディングで映像をより印象的に表現する方法・其の二 【Simon Walker 氏による Colorista 解説】
・撮影済みの昼間のクリップが、早朝や夕方の景色に変身! 【Simon Walker 氏による Magic Bullet Suite 12 活用事例】